[ [ [  A lovely young witch  1  ] ] ]


 誘拐された少女を無事救出し、ナジョーにかけられた魔法も解くことが出来た。
 ロジャーとミリーは怪我を負ったし、肝心のダポンも逃がしてしまったが、一応は一段落がついて、今までの―――約三週分の―――疲れが一波になって押し寄せてきて、ゾロリは丸木に腰をかけて休んでいた。
 ランプの攻撃にはちょっとばかし死ぬかと思ったぜ……なんて内心びびりまくっていたのは永遠の秘密だ。
 そしてその時、後ろで魔法使いの少女があの特有の甲高い声でロジャーたちに向かって叫んでいた。

 ダポンは悪くないと。
 何か理由があるのだと。
 お願いだ、助けてくれと。

 二人の魔法使いは―――特に男の方は融通が利かないものだから―――目を吊り上げた。はじめの間は眉を潜めて黙っていたが、少女があまりにしつこいものだから、捩じ伏せるような口調で『莫迦なことを言うな』と説き聞かせ始めた。
 傍から見ながら、ゾロリは素朴な疑問を覚えた。
 思わないほうが不自然だろう。
 つい一時間前まで、彼女はそのダポンに捕まって、縄で縛られて、魔法を読むことを強制させられたのだ。しかも落とされかけるわ、ロケットの攻撃を受けるわ、散々な目にあった。怖い思いをしたはずなのに。
 その後、エージェントの二人は情報局に報告のために一旦戻るといい、その間ネリーとゾロリたちはダポンビルの前で待っていることになった。イノシシたちはこのビルの豪勢なつくりに驚いて、お金持ちごっことやらをしながら声を上げて遊び回っているが、ハリネズミの少女はさっきまでのゾロリと同じように丸木の上に背を丸めて座っていた。思いつめた表情で地面を見つめている。
 ゾロリは後ろから近寄って、その小さな肩を叩いた。
「なあ、ネリーちゃん。
 ダポンとかなり前から会っていたのか?」
気配は気づいていたのだろう。少女はゾロリのほうを見上げて、ゆっくりと横に首を振る。
「じゃあ、どうして、あいつが悪い人じゃないって知っているんだ?
 悪いヤツじゃなきゃ、ネリーちゃんに呪文を詠ませたり攫ったりしないだろ? 魔法の森が封印されたのはあいつの所為なのは間違いないじゃないか」
正論に、少女は一瞬言葉がつまる。
 だが、彼女は知っている。
 この男はロジャーや姉と違って、頭から否定しない。ただ本当に疑問だから、尋ねているのだ。自分の言葉を受容れる気持ちがあるのだ。
 ゾロリはネリーの横に座って、その顔を覗き込んできた。小さな指をこすり合わせて、懸命に考え込んでいるようだった。
「あのね、私、前からダポンさんのことは知っていたわけじゃないの。学校に薬を売りに来ている人ってくらいしか、覚えていなかった。
 でも……ドラゴン牧場に向かう道で同じになったとき、あの人は私に声をかけてくれた」
 ―――紡ぎ始める、物語の始まり。


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