[ [ [ オラたち、悪いことはしないだ。 3 ] ] ]
ガオンは知っている、わかっている―――だから、言わない。
目の前の恋人が普段とは違うことを。
黒いシルクハットに黒いマント、そして黒いマスク。いつもの怪盗ルックだが、それはゾロリがここぞ一番という時にしか着ない取って置きの衣装だ。マントも厚手の生地だし、マスクの黒も良い色をしている。
それは、勿論、王子としての目から見れば取るに足らない衣装だ。
だがゾロリにとっては最高の服なのだ。
ガオンがデートのつもりで呼ぶと、彼は必ずこれを着てやってくる。
イシシとノシシに騙されているのではなく、彼もデートだと知って来ているのだ。あまりにも早くから待ち合わせに来ているゾロリよりもわずかに遅れて着いたガオンは、つくなり、言った。
「さ、キスの一つでもしてくれないか?
いつものとおり」
「……こんな道端で、出来るわけないだろ」
半眼で呆れた目をしながら、さらりと流される。
だが、いつものように言葉に冷たい響きはない。
にやりと恋人は微笑みながら追加した。
「じゃあ、手は?」
ひらひらと茶色の毛に覆われた手を恋人の前にかざすと、一瞬顔を赤らめて上目遣いで睨んでくる。
……が、そんな可愛い表情をしたものの、しゃあねぇなと小さく呟くや否やその手をとった。
「で。
今日は何処に行くんだ?」
「何処へでも。
行きたい所があれば、連れて行ってやる」
「……。
…………アクエリ、行きたい」
「イシシとノシシに一年間無料のチケット渡したはずだぞ? もう行って楽しんだんだろう?」
ガオンが問い返すが、返事はいつまで待っても戻ってこない。代わりに、繋がった手がきつく握り返された。
「……言わないとわかってやらん」
恋人の気持ちは全てわかっていたが、ふふんと鼻を鳴らして意地悪く言う。ゾロリは、低い声でぼやいた。
「そういうところがお前は恥ずかしいんだよ」
と、口答えはしたものの。
「ガオン。
お前と、行きたいんだ」
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