[ [ [  星に願いを 3  ] ] ]


 夢で寝ぼけていた、ということで、話を片付けて。
 ガオンは着替えて客間へ出てくると、そこにはちょっと機嫌の良さそうなゾロリがソファで待っていた。彼―――否、彼女なのだろうか―――とにかくガオン王子の最も愛すべき相手―――の目の前には高級チョコレートの箱。一週間前に居た国で、土産に貰ったものだ。全世界に輸出しているものだが、やはり本国の本店の味は別格だった。
 ガオンはその所業を咎めずに、むしろ戸口で佇んでじっくりと恋人の姿を見つめていた。

 忙しなく動く大きな目。
 彼のテンションに合わせて動く二つの柔らかな耳。
 魅惑的でふっくらとしした小さな唇。
 細い腕、細い腰、細い足。

 さらに注意深くみて見ると、喉に、男の象徴である凹凸が見られない。そして、なんとなくだが、全身に丸みがあるような気がする。
 極めつけは、胸の膨らみだ。
 よく女装には菓子パンをつめると言っていたが、今ある胸の谷間はどう見ても菓子パンのそれとは違う。さほど大きくなく、小ぶりなのだ。あれを女装でするとしたら、最近流行のヌーブラを改良しても上手く出来ないような気がする。

 ……女、だったのか?

 ゾロリと夜を過ごしたことは一度二度ではない。両手両足を二倍に増やしたとしてもまだ足りない。
 しかし、残念なことに、ゾロリが嫌がるので大方暗くしているから、じっくりと見たことが……あまりないのだ。

 いやいや。やはり、男だった……ように思う。

 ガオンは、もはや、男だと言い切る自信がなくなり始めていた。
 そんな気弱な己に気づいて、ぶるぶると顔を振って叱咤する。
 そんじょそこいらの相手が恋人ならば、己が愛すべき相手を疑ったりはしないが、自分の愛しき者は世界を手玉に取る大悪党(予定)なのだ。そうほいほい信じてはならないのだ。

 コイツのいつもの悪戯の可能性もあるわけだからな、いいか、簡単に乗せられるんじゃないぞ。どうにかして化けの皮を剥いでやる。

 王子はある決意を抱いて、部屋をつっきって、ソファの下へやってくる。男の気配に気がついたキツネは、新たなチョコレートへと伸ばしていた手を止めて振り返った。
 ガオンが右手をさし出すと、ゾロリはついと唇を尖らし、頬を赤くして愛らしく睨むのだが、暫くして、おずおずとそこに自分の手を重ねてきた。人の居ないときだけはこうやってこっそり甘えてくれる。ゾロリの癖だ。

 可愛っっ……っ

 禁ゾロリが長期に渡っていたので、その破壊力は凄まじい。下半身に血流が行きそうになる。というか、もう僅かに興奮したのだが、それを見せぬよう必死で堪えて、ガオンは柔らかな手の甲にそっと口付けを落とした。
 彼の自然な仕草に、キツネは不満そうに肩を竦めた。
「……気障ぁぁ〜」
「悪いか?
 待たせたな」
上目遣いで睨めあげると、キツネは耳まで紅潮していた。男の目線に気づくとふんと鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまう。口では文句を言いながらも実際は嬉しい、素直じゃない奴だとガオンは胸中呟いて笑う。懐かしい仕草だ。
 次の言葉を戸惑うガオンの前で、嗚呼、とゾロリはガオンから手をひき戻してぽんと叩く。
「なんかお前の部下がさ、祝うとかなんとかで下で待ってるっつってたぜ」



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