[ [ [ 再会編 2 ] ] ]
あまりに仕事が忙しくなったので、ダポンは仕方なく短期間ですが自分専用の箒の運転手を雇います。
その人はあまり魔法が得意ではないので、逆に年若い雇用主に親近感を覚える。十歳以上上の兄貴分、といったかんじです。生活面で色々と助けてくれる。
「社長、私の兄の子と同い年なんですか。大変ですね」
「いやいや、まだ学ぶことが多くて」
「じゃあ、ちゃんと食べて精力つけなきゃ。
お昼一緒にどうですか?」
「―――いえ」
情報局の薬補充に、ロジャーはたまたまその姿を見ます。
ダポンと従業員の仲睦まじげな様子。
ふと、エージェントの中にどす黒い怒りが込み上げてくる。彼の隣をとられた、その一点がどうしても許せない。
その夜ロジャーはダポンの家にごり押しで入り、体の関係を要求すると、薬剤師はあっさり承諾します。
しかも。
「貴方からそうおっしゃっていただけるなんて、嬉しい」
彼としては、情報局エージェント部門(他にもいくつかの部署があります)という巨大顧客を逃さないために、体を使ってくれるほうが嬉しい。
ですが、ロジャーはその言葉を完全に勘違いするのです。
******
ええと、この後も多少痛いことが連続で起きて、ロジャーがようやくダポンが昔から変容していることに気づきます。
というか色々追い詰められている状況だと察します。
「何でも、相談にのるから。
私に出来ることがあればいくらでも言ってくれ」
と、ロジャーが勇気を振り絞って言うのですが、薬剤師は契約=仕事のことしか頭にない。
契約を継続してもらうこと以外に、ロジャーに求めるものなどはなからありません。
エージェントは体の関係を持ったことで特別になったと思っているのですが、薬剤師は体の関係を持ったことで『ただの一般的な顧客』になったと思うのです。
まあ激しくすれ違っていても、とりあずそれで一応安定しています。
一方若社長の努力のおかげでなんとか経営を立て直したダポン薬局。
ですが運転手代わりの従業員が死にかけたり、桔梗会とは相変わらず縁が切れなかったり、実際は色々問題山積み。
そんな中、ダポンはある情報局の作戦に特別に加わるよう依頼されます。
魔法薬学会の伝で、その手の研究をしているのはダポン以外いないと情報局は知る。彼の新薬開発・研究成果は薬剤師のうちでは超有名。数年前の公演記録がいまだに高値で取引されている状態。先日送った新薬の研究成果では、あまりに凄くて、とうとう学会内で一波乱起きてます。
ダポンはエージェントたちが立てた無謀な作戦を聞きいて呆れるのですが、薬が買ってもらえるならとどうでもいいと承諾します。
自分が出来ることは……とその下らない作戦に役立つ薬を挙げると、部署違いのはずのロジャーが何故か作戦に参加していて、その薬を欲すのです。どころか、彼は提案してさらに魔法の難易度を上げる。
無理だろう、どうせ一か八かの賭けに使うつもりだ、と嘲笑いながらダポンは作って渡します。
しかし、ロジャーは完璧に使いこなすのです。
ダポンが薬剤師の天才ならば、ロジャーもまた魔法の天才。
キャパシティだけではなく、精度やその他諸々一切の非の打ち所ない才能があり、かつ、彼はそれを伸ばす努力を決して怠らなかった。
その光景に目を疑う薬剤師。自分の薬を使ってここまで見事な魔法を使った者は他にいない。それどころか、あまりにも神秘的で美しい光景に言葉を失う。
彼は、その奇跡に見蕩れてしまう。
その所為で、ダポンにとってあまりリアリティのない存在だったロジャーが、俄に、生々しく感じられます。
顧客というカテゴリーの一つ。そんな扱いだった彼が、一人の『人』になる。
しかしその所為で、ダポンには今まで現実感が希薄で(怪我をしても一瞬で治してしまうので)、『痛くない』と思いこんでいた魔法による『痛み』が、ロジャーに限って感じるようになってしまうのです。
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〔0.はじめに〕
〔1.学校時代〕
〔2.再会後1〕
〔再会後2〕
〔再会後3〕
〔再会後4〕
〔3.封印後〕
〔4.裁判前〕