[ [ [  再会編 4  ] ] ]


 一方、魔法学校にて。
 補充に来た人がダポンでないので心配した先生方はダポン薬局の従業員を捕まえて尋ねます。
 ホテルで転んで怪我というのも外聞が悪いので、対外的には薬草を取りに行った際の怪我ということにしています。それを聞いて、案じる先生達に、軽い怪我ですからと笑って従業員は答える。
 それを聞いた校長たち一同は考え込むのです。
 確かにダポンは元卒業生で、魔法学校の薬なんて大した量でもないのにきちんと配給に来てくれている。
 しかし、彼の薬剤師としての才能は、噂で色々と知っています。
 魔法薬学会でも一目置かれた存在です。そして、今回の魔法薬学会に提出した論文は今年の最優秀賞とも囁かれ、学会どころか医学界その他諸々を震撼させたというのです。魔法の国の一般人に情報が伝わるのも遠くない。
 ならば、ここに来てもらうような時間も勿体無いのではないか、と。
「社長になったけれども、やはり今も研究熱心なのかい?」
「ええ、まあ……。
 うちのダポンの研究熱は異常ですからねぇ。
 この前も、特殊の心臓薬を作ったとかで、手術が数件成功したとかで、新薬として売り出そうか検討中なんですよ」
いや作り方が凄くてね。
 と、従業員は熱弁をふるいます。
 それを聞いた先生方は話し合ってあることを従業員に告げます。
 その日、ダポンのお見舞いに行きます。教頭先生は元気そうな彼にほっとしつつ。
「そうそう。
 今度から私達が薬をそっちに買うように行くって決まったから」
「え?」
疑問符を浮べる元教え子に、彼はどれだけ今日良い話があったのかを伝えます。
「新薬の話を聞いてね。凄いじゃないか。
 もっと自分の為に時間を使ったほうが良い。
 この国の魔法の薬の発展は君にかかってるんじゃないか、っておばちゃんも校長先生も喜んで言っているよ」
 教頭先生は、元教え子の為にと思って言った言葉。

「手の空いている先生が持ち回りすれば、補充に来なくて良いよ」

 しかしこれこそが。
 ダポンを果てのない絶望の淵に叩き落す呪文だったのです。

 *****

 翌日病院から無事退院した薬剤師は、薬と『お探しの魔法の本』を持って学校へ行きます。これが最後の配給なのです。
 彼は、理解する。

 魔法の薬は、全然役に立たない。
 どころか、邪魔をする。
 俺の邪魔をする。
 こんなもののせいで上手くいかない。
 こんなものがあるから上手くいかないんだ。
 魔法の薬が、どうしようもないくらいに憎い。

 虚ろな目に映る世界は長閑な春の景色。
 桜舞い散る一本道。
 あの木はどんな効果があってどういう処方が良くて―――と知識がぐるぐる回るのですら鬱陶しい。
 その知識がいつかなんとか出来ると思っていた自分も鬱陶しい。
 この景色も何もかもが邪魔だ。

 邪魔をする。

 図書室で本を探す少女を見つけ、その子にかつてのライバルの面影を見て、あのふてぶてしいライバルならば読ませるのに相応しいと本を置きます。
 こうして魔法の森は封印されるのです。


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再会後3〕 〔再会後4〕 〔3.封印後〕 〔4.裁判前